約 2,249,621 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2257.html
アルビオンから帰還しての最初の朝、教室にやってきたルイズとジョセフをクラスメイト達が一斉に取り囲んだ。スキャンダルに目敏い生徒達の間では、ルイズ達が学院を留守にしている間にまた何か手柄を立ててきたという噂で持ち切りだった。 ルイズ達が出立する朝に魔法衛士隊の隊員と一緒にいた所を目撃したのはキュルケだけではなく、数人いただけだった。が、それでも噂好きな生徒達に数日の時間があれば、話が尾びれをつけて大きな噂になってしまうのはある意味自然とも言える。 ルイズ達と共に学院を留守にしていたキュルケ達に話を聞こうと試みたようだが、そもそも喋らないタバサ、軽薄な態度なのに実際は余計な事はぺらぺら喋らないキュルケはともかく、人から注目されるのが何より大好きなギーシュでさえ何があったかを語らなかった。 これ以上粘っても無駄だと判断した生徒達は、朝食の場にも現れず、最後に教室へやってきたルイズを取り囲んだが、当のルイズは素っ気無くジョセフに視線をやった。 「それについては、私が説明するよりジョセフが説明した方が判り易いでしょ?」 そう言いながら、自分は生徒達の壁を掻き分けて席に付いてしまう。 確かに同じ内容の話を聞くなら、話術に長けているジョセフに聞いた方がよっぽど楽しめると判断した生徒達は一斉にジョセフの元へと集まってきた。 「――で、ジョジョ。貴方達、授業を休んでどこに行っていたのかしら? 私達に説明してちょうだい」 腕を組んで優雅に問いかけたのは、香水のモンモランシーだった。 ギーシュとの仲を取り持たれ、早いうちに赤い洗面器の会の一員になったモンモランシーだが、それでも平民と貴族との身分の差を忘れない鷹揚な態度で言葉を掛ける。他の生徒達も、「そうだそうだ! 早く聞かせろ!」と調子を合わせている。 だがジョセフの目には、偉そうな態度を崩していない生徒達は、餌を待って大きく開けた口からぴよぴよ鳴き声上げている姿と変わりなく見えていた。 「ん~~~~、どうしよっかのォー。そんなに聞きたいんか?」 「勿体ぶるなよジョジョ! 早くしないと先生が来ちゃうじゃないか!」 「そうよ、もっと早く来てくれれば良かったのに!」 そろそろ教師が来る時間だと判っていてわざと焦らすジョセフに、生徒達は焦って話を促す。 口を尖らせながらも期待に満ちた純真な目でジョセフを見つめる生徒達の背に視線をやり、ギーシュはチェッと舌打ちした。 「あーあ、本当なら僕がみんなの注目を受ける手筈だったのに」 取り囲まれてちやほやされたりされるのが大好きなのもあるが、愛しのモンモランシーまでジョセフの話を聞く為早足になっていた事もギーシュの心を少しばかり傷付けた。 ウェールズの居室で朝食を取っている際、ジョセフは、魔法衛士隊に裏切り者がいたり亡国の王子を匿う事になった今、噂好きの生徒達に対して下手に全員で黙り込むよりはそれっぽい作り話を聞かせて満足させてしまおうという提案をした。 それに対してルイズは、パンを一口大に千切りながら興味なさげに言った。 「そんなの、何も言わなければどうせ諦めるわよ。そんな事しなくたって別の面白そうな事があればそっちに興味が行くんだから」 しかしキュルケは、エビのソテーをフォークで切り分けながら笑う。 「あら、何も言わない方が却ってみんなの興味を集めてしまうんじゃない? こういうものはね、隠されると逆に聞きたくなるものなのよ。特に噂話の大好きなトリステインの貴族はね」 「ツェルプストー!」 早速声を張り上げたルイズに微苦笑を浮かべながらも、ウェールズはスープを一匙飲み下し、ふむと頷いた。 「いや、ミス・ツェルプストーの言う事ももっともだよ。私と言う厄介事を抱えている以上、僅かな綻びが大きな災いを呼ばないとも限らない。私はミスタ・ジョースターのアイディアが最良だと考える」 「う……皇太子様がそう仰るのなら……」 今にもキュルケに噛み付こうとしていたルイズも、ウェールズの穏やかな言葉に渋々矛を収めた。 「それならば他の誰でもない僕の出番だね! ああ、待っていてくれたまえ僕の可愛い子猫ちゃん達!」 「あんまりムチャな話だと誰も信じんし、ある程度は本当っぽいコトを混ぜておかんとな」 薔薇を口にくわえてクネクネするギーシュを完全無視して、ジョセフ達は作り話の内容を決めに掛かる。全員が少し考えた後、口火を切ったのはルイズだった。 「ええと、じゃあオスマン氏に頼まれて王宮へお使いに行ったって言うのはどうかしら」 「それじゃご期待に添えないわねぇ。それだけの為に魔法衛士隊の隊長様が一緒に行くとか大袈裟すぎない? 曲がりなりにもスクウェアメイジだったんだから」 「あー、んじゃ王女様の独断で吸血鬼討伐の命令受けたっつーんはどうじゃ」 「げふっ」 話に参加せず黙々と六人分のはしばみ草サラダを食べていたタバサが、突然むせた。 「あらどうしたのタバサ、慌てなくても誰もはしばみ草なんか食べないわよ」 「……問題ない」 ハンカチで口元を拭きつつ、再びサラダに取り掛かる。 「でも親愛なる級友の皆様は、ゼロのルイズが吸血鬼を倒したなんて話を信じるかしら」 「ゼロって言うな!」 「んじゃこうするか。姫様が行幸されてる間に、途中の村から『村人が次々と姿を消している、もしかしたら吸血鬼かもしれません』という訴えを聞いたことにしよう。じゃが行幸の最中じゃから今すぐ動けるのが御付の魔法衛士と、昔の友人だけだった。 で、吸血鬼かと思って調べてみたら実は吸血鬼を騙った人攫いの山賊じゃったと」 「げほっ! げほ、かはっ!」 またむせたタバサの背を、キュルケがぽんぽんと叩いてやる。 「どうしたのよタバサ。もしかしてドレッシングの酢が効き過ぎてる?」 「何もない……気にしないで」 事ここに至り、タバサは休みなく動いていたフォークとナイフを一旦止める。 もしかしたらジョセフは、何か突き止めているのではないかと言う疑念がタバサの中に芽生えた。読心能力のあるハーミットパープルでついうっかり自分の事情を知ってしまう可能性もないとは言い切れない。 結果から言えば、タバサが食事を中断したのは正解だった。 ジョセフがゲラゲラ笑いながら提案した作り話は、その山賊の一人が昔ルイズの屋敷で働いていた使用人だったり、山賊をひっ捕らえたのはいいがその裏にミノタウルスがいたり。 そうかと思えば事件の真の黒幕は村に隠れ住んでいた年端も行かない子供が吸血鬼でした、などなど。 ルイズはあまりにも突拍子もなく脱線したジョセフの作り話に呆れていた。 「そこまで行くと明らかにウソですって言ってるようなものじゃない。そりゃ吸血鬼もミノタウルスもいないことはないけど、そこかしこにホイホイいるものじゃないんだから」 キュルケはお腹を抱えてテーブルをバンバンと叩いていた。 「もうダーリン最高、ホラ話もそこまでいくともう笑うしかないじゃない!」 ウェールズはキュルケのようにオーバーアクションで笑うことはないものの、食後の紅茶を飲みながら、ほっといたらどこまでも脱線し続けるジョセフのホラを優雅に笑って聞いていた。 ギーシュはさっきからずっと「さあ子猫ちゃん達! もっと僕をッ! 隅々まで舐めるように僕を見てッ!!」と想像の大観衆の視線を一手に集めてくねくねくねくねしていたが、そんな明るい部屋の中で一人、タバサは背中にゴゴゴゴと奇妙な効果音を発生させていた。 (どこまでッ! どこまで知っているッ!?) タバサの裏の事情を知らない無関係の人間が、そこまでピンポイントに狙った冗談を連発出来るはずがないのだが、ジョセフはこれっぽっちもタバサの事情なんか知らなかった。 十二匹のサルにタイプライターをタイプさせ続けたら宇宙の終焉までにはシェイクスピア全集が書き上がる、という話もあるが、ジョセフは早々とタバサの冒険を上梓していた。 普段通りの無表情の仮面の下、ジョセフへのこれからの対処法と、(彼なら本当に知っていたとしたらこんな無用心に情報を明かすとは考えられない……!)という思考のせめぎ合いに翻弄されていることなど、流石のキュルケでも察することは出来ない。 愉快なジョセフの漫談も、授業の時間が近付いてきてしまってはいいところでケリをつけなければならない。 結果、「吸血鬼が出たと訴えてきた村へ至急魔法衛士と友人を派遣したら、実際は人攫いの山賊がいただけで特に問題なく山賊を討伐して帰ってきた」という無難な話で収まった。 実際の旅でも、山賊ではないがラ・ロシェールの傭兵を撃破した実績はあるのであまり外れた嘘でもない。 この件は全てジョセフが説明する、という事に約一名を除いて全員の同意を得た上で、アルビオン行のメンバーが教室に向かい、現在に至るという訳だった。 ジョセフが語って聞かせるちょっとした冒険譚は、クラスメイト達の中で増幅された噂話が築き上げた大手柄に比べたらとてもささやかなものだが、ジョセフがちょくちょく織り交ぜる大嘘の痛快さが彼らの不満を解消する役目を果たしていた。 「じゃがわしの手札はブタ! 向こうはそれが判っているはずなのにわしが次々と積み上げる金貨の山に恐れを為して滝のように汗を流すわ椅子から転げ落ちるわ失神するわ!」 朝食の席ではなかった新たな展開が繰り広げられている真っ最中の人だかりを、なおも未練がましそうに見つめているギーシュ。 いつも通り本を読んでいる振りをしながらも、横目の視線が油断なくジョセフを捕らえているタバサ。 そしてもう一人。人だかりとジョセフに落ち着きなく視線を走らせながらイライラと親指の爪を噛んでいるルイズがいた。 (何よ何よっ! だらしなくデレデレしちゃって!) いつも放課後にしているように、クラスメイト達に笑い話を聞かせているだけの姿が、どうしても今日のルイズには若い少女達に囲まれて喜んでいる様にしか見えない。当然、少女だけでなく少年もいるが、流石に少年達へは嫉妬を向ける事まではなかった。 (ジョセフは私の使い魔なのよ! ほらもうそろそろ授業じゃない、早く返しなさいよ!) 自分の使い魔を大切にするのは半ばメイジの義務のようなものだが、それを考慮に入れてもルイズの嫉妬っぷりは大したものである。 教室の騒ぎには頓着することもなく化粧を直しているキュルケは、禍々しいオーラを立ち上らせているルイズを一瞥してはぁと溜息をついた。 結局盗賊を捕まえたが、しかし事件解決の為に火竜山脈へ極楽鳥の卵を取りに行かなければならなくなったところで話は終わった。ミスタ・コルベールがやってきたからだ。 それぞれ席に戻る生徒達と同じように、ジョセフもルイズの隣の席に戻ってくる。 やっと自分の側に戻ってきた使い魔の暢気な横顔に怒りが込み上げてくるものの、それをぐっと飲み込んでギギギと視線を前にやった。 さてコルベールの授業だが、今日は何やら奇妙な物体をレビテーションで運んできたのを見た生徒達は各々「ああ、今日は休講か」と判断する。 彼は生徒の教育に冷淡というわけではなく、むしろ情熱を持った部類の教師ではあるのだが、それ以上に自分の研究に対して非常な情熱を傾けている。 結果、自分の授業の時間をちょくちょく研究の成果を披露する場にしてしまうことは珍しいことではなく、私語にかまける生徒達をほったらかしにしたまま自信たっぷりに高説を繰り広げる光景が展開されるのだ。 今日も今日とて金属の筒やパイプやふいごなんかが組み合わさった装置を見たルイズは、授業時間が無駄になることを悟りつつも、とりあえずはコルベールの説明を聞く事にした。 コルベールが滔々と語る言葉によれば、火の系統は破壊だけではなくもっと別の使い様があるはずだと言う。メイジが自分の得意とする系統を殊更に褒め称えるのは珍しいことでもないし、現にコルベールも炎蛇の異名を持つ火のトライアングルメイジである。 しかし彼は他の火系統のメイジとは違い、火の魔術の本領とも言える破壊に関してはあまり重要視していない節が見られた。むしろ他の系統と比較するとやや劣る応用性を火の魔術に求めようとしていたのだった。 そのせいか、他の火系統のメイジからは多少なりとも軽んじられている。同じく火系統のトライアングルメイジのキュルケは、コルベールの授業を頭から聞くつもりがなかったりもする。 油と火の魔法を用いて動力を得ると自信満々に発明した装置を披露したコルベールだったが、如何せんその装置が何をやるかと言えば、装置の中からヘビの人形が出たり入ったりするだけだった。 呆れた顔をしながらも一応は最後まで付き合う生徒の人数も最近では減少の一途を辿っており、最近では大体の生徒がさっさと見切りを付けて近くの生徒達と実りある私語に没頭している。 コルベールが自慢の発明品を披露した際の日常的な反応だが、当のコルベールは何度も繰り返された状況に悲しげに眉を寄せながらも、それでも懸命に説明をする。 それに反応する生徒は更におらず、反応があったとしても「そんな装置使わなくても魔法使えばいいじゃない」という……ハルケギニアでは至極真っ当な返事だった。 勉強が嫌いではないルイズとしては、こんな益体もない講釈を語られる暇があったらもっと魔法の勉強をしたいというのが本音である。 せっかくの授業時間が無駄になった、と頬杖付いて溜息をつこうとした瞬間、横から大きな拍手が聞こえた。 不意の拍手に驚いてそちらを見れば、ジョセフが立ち上がって拍手をしている……つまりスタンディングオベーションの形を取っていた。 「ブラボー!! おお……ブラボー!! 素晴らしいッ、それこそ正に『エンジン』ッ!」 教室中の視線を再び一手に集めながらも、ジョセフは心からの賛美を惜しまず手を打ち続けていた。 「えんじん? ええと……君はどなたかね?」 突然浴びせられる賛美の声に、コルベールも虚を突かれてジョセフを見た。 「おっと、わしの名はジョセフ・ジョースター! そんなことよりそいつぁエンジンじゃ、もわしのいた国では、そいつを使ってミスタ・コルベールが説明した通りのことをしとるんじゃ。いや、それにしても素晴らしい!」 「ちょっとジョセフ! いきなり何目立つようなことしてるのよ!」 ルイズが慌ててジョセフのシャツの裾を掴んで座るように手を引いたものの、思いがけないものを目撃して興奮したジョセフはビクともしない。 「ミスタ・コルベール! そいつはアンタが一から作ったんですかな!? もし良ければそいつについてもっと話をしたいんじゃが!」 それどころかルイズに裾を掴まれていたことさえ気付かず、そのまま主人の手を離れて教壇のコルベールへと早足で近付いていき、そこから装置の成り立ちや仕組みについて生徒達を完全に放置してハゲとジジイだけが大盛り上がりする、奇妙な光景を展開させる。 さっきまで興味なさげに聞いていた生徒達も、「おい、ジョジョがあれだけ食いつくってことはあの装置はすごいものなんじゃないか?」と、先程とは違う食い付き方を見せて周囲のクラスメイト達と盛り上がり始めていた。 だがルイズは一人、ついさっきまでシャツの裾を掴んでいた手をじっと見つめた後、周囲の盛り上がりをよそに机に突っ伏して目を閉じ、考えるのを止めた。 結局授業時間が終わるまでジョセフとコルベールの会話は続き、今日一日の授業を自習にしてジョセフを自分の研究室へ招待する事を提案されたジョセフがそれを快諾した所で、ルイズはむくりと身を起こし、少しばかり怒りを込めてジョセフを見やる。 主人が自分をじとりとした視線で見つめているのも気にすることなく、あっけらかんとした声を掛けた。 「おうルイズ、わし今からコルベールセンセんトコに行くことになったんじゃが来るか?」 「………………ええ、ご一緒させて頂きますわ、ミスタ・コルベール」 今にも口から飛び出しそうになった怒りをしっかり飲み込んで、精一杯の儀礼的笑顔を貼り付けて、嫌味たっぷりの挨拶を引き攣りながらも言い切った。 「おおそうかね、ミス・ヴァリエール! 是非来てくれたまえ、ミスタ・ジョースター! 見学は大歓迎だよ!」 「よしよし、んじゃあそうなったら善は急げじゃな!」 しかしハゲとジジイは少女の刺々しい皮肉を察するどころか完全に気付く気配もなく。大張り切りでこれからの予定を決定してしまう。 そのまま三人は本塔と火の塔の間にあるコルベールの研究室へ向かった。 「さあここが私の研究室だ。初めは自分の居室で研究をしていたのだがね、研究には騒音と異臭は付き物でね。隣の部屋の連中から苦情を頂いてしまった」 「ふうむ、実に趣のある研究室じゃなあ」 ジョセフが感心したように言うが、虫の居所が悪すぎるルイズはもっと率直な意見を言い放った。 「ただのボロい掘っ立て小屋じゃない」 研究室という言葉をこの掘っ立て小屋に適用するなら、その辺りの物置も研究室になりかねない。 「いやいやルイズ、実に悪くない。このハルケギニアであんなエンジンを一人で一から作るような研究者の拠点としちゃー実に上出来じゃぞ?」 コルベールが開けたドアから三人が小屋に入るが、途端に匂った異臭にルイズは眉間の皺を更に深めて後ずさって鼻をつまんだ。 「な、なによこの臭い!」 「なあに、臭いはすぐに慣れるものだよ」 小屋の中は棚や机の上に所狭しと並ぶ薬品のビンや試験管に雑多な研究器具があり、壁一面の本棚にこれでもかと本が詰め込まれ、その他にも天体儀や様々な地図、オリの中にヘビやトカゲに奇妙な鳥と、ガラクタと紙一重な混沌とした物品で溢れていた。 それに埃やカビが混ざり合って、貴族育ちのルイズがついぞ嗅いだ事のない悪臭が醸し出される。ルイズは室内に入ろうともせず、外から抗議の声を上げた。 「レディにこんな鼻が曲がりそうな臭いの中に入れと仰るんですか、ミスタ!」 ルイズも目上の人間への礼儀を十分身に付けている。普段ならもう少し穏便な抗議をしていただろうが、コルベールは気分を害した様子もなく苦笑して肩を竦めた。 「ご覧の通り、御婦人方にはこの臭いは非常に不評でね。見ての通り、私は独身である」 「はは、まーしょうがなかろうな。主人にこの匂いは刺激的過ぎるようじゃな、一味違うというヤツじゃからのう」 ジョセフもコルベールと会話を続けるうちにいつの間にかタメ口を利いていたが、コルベールは平民の無礼な態度を気にする様子を見せない。研究の理解者が突然現れた喜びの他にも、そもそも身分の差を気にも留めていないようだった。 「まー、あんな見事なものを見せてもらったんじゃ。まだまだ改良の余地はあり放題じゃが、一人でエンジンを作った栄えある技術者じゃからな。そういう人には、わしとしても協力をしたいとは思うんじゃよ」 そう言った瞬間、ジョセフは手袋を脱ぐとかちゃりと左腕を外す。 「ちょ!? いきなり何してんのよ!?」 外から中の様子だけは伺っていたルイズが驚きの声を上げるが、ジョセフは取り外した義手をぶらぶらと揺らして見せた。 「いやー、ここに来てからコイツのメンテナンスをちっともしてなかったんでな、ちょいとキリキリ言い出してきたんじゃよなァー。まあコルベールセンセは最初にわしの左手見とるし、エンジン組める実力があるならちょいとメンテも頼めるかのうと」 そしてルイズからコルベールに視線を戻し、コルベールに義手を差し出す。 「わしのいた国でも最高級の義手じゃ。コイツの仕組みは次のエンジンを設計する時には大いに参考になるじゃろうからな。そうそう、あんまりバラしすぎて元に戻せませんでしたッつーのはカンベンしてくれよ?」 ぱちり、とウィンクしてみせるジョセフから、コルベールは興味津々な様子で義手を受け取った。甲に浮かんでいたルーンを見て、やっとコルベールはジョセフが伝説の使い魔ガンダールヴだということを思い出した。 「ほう、これは……まるで彫刻のような造形だな。どれ、少し分解して仕組みを確認させてもらおう」 床に置かれていた工具箱から幾つか工具を取り出して、机の上に置いた義手の分解に取り掛かるコルベール。作業に入ってさしたる時間も置かず、コルベールの顔を驚きが占めた。 「これは……何という事だ! まさかとは思うが、これの動作に魔法は一切使われていないのかね!?」 「おうともさ、わしの懇意にしてる技術者の汗と涙の結晶じゃ」 スピードワゴン財団謹製の義手は、地球でもオーパーツ並の完成度を誇る代物である。金属質な外見も手袋を被せてしまえば、生身の手と同じように日常を送ることが出来る。 かつてルーンを確認した時は、義手が稼動する所も見ていなかったが、こうして中身を見ればこれがとてつもない技術で作られている事がすぐに理解できた。 「ふむ、様々なパーツを組み合わせることによってこんなに自然な動作で人間の手を再現するとは……。すごいな、君の国ではこんな技術が普通にあるのか。一体どこの国の生まれかね」 コルベールの問い掛けに、外から中の様子を伺い続けているルイズの顔色が変わる。 「え、ええとミスタ・コルベール! 彼はその、ええと、東方のロバ・アル・カリイエから召喚されたんです!」 「なんと! あのエルフ達の住まう地の遥か向こうの国からかね! 召喚されて来ているのだから、エルフの地を通らずともここにやってこれた訳か……なるほど、東方の地では学問、研究が盛んだと聞いた。かの国はこんなに技術が進歩していたのか」 咄嗟にルイズが言い繕った言葉に納得したコルベールに、ジョセフが続けて言った。 「ああ、実はわしこっちの世界の住人じゃないんじゃよ」 ルイズとコルベールの動きが、時を止められたように止まった。 「何と言ったね?」 「あ、ああああ、あんた何を言って……!」 豆鉄砲を食らったような顔をするコルベールと、狼狽するルイズに構わずジョセフは言葉を続けていく。 「ハルケギニアとは違う別の世界から主人に召喚されてこっちに来たんじゃ。この前フーケのゴーレムブッちめた破壊の杖も、そもそもわしの世界の代物なんじゃよ」 あっさりと自分の素性をバラした使い魔に駆け寄ると、ルイズは渾身のチョップ……いや、貫手と称していい一撃を脇腹目掛けて打ち込んだ。 「ぐはっ!?」 「こ、こ、こ、このボケ犬うううううううううう!! 何ご主人様がかばってあげてるのに自分からいきなりバラしちゃうのよ!?」 はーはーと息を荒げてピンクの髪から湯気を立ち上らせるルイズに、ジョセフは脇腹擦って口を尖らせた。 「んなコト言われてもルイズよォー、いくらロバ・アル・カリイエとやらがこっちじゃ未知の国じゃっつってもそんな取って付けたウソなんかすぐバレちまうぞ。そんなモン、わしがこの義手を渡して分解させるって時点で自分の素性くらいバラすつもりじゃったしよ」 そこからきゃんきゃんわめく主人を適当に宥めているジョセフを、コルベールはまじまじと見つめてから「なるほど」と、納得したように頷いた。 「おやセンセ、思ったより驚かんな」 「そう見えているかね? だが確かにそうだ、君がミス・ヴァリエールの使い魔になってからの言動や行動を鑑みるに、ハルケギニアの常識の範疇を越えた所に君は存在している。そうか、それならぱ合点がいく。そうかそうか……これは面白い」 「ふーむ。まあ一人でエンジン作っちまうのもそうじゃが、センセも大概こっちの世界の常識を踏み越えとるタイプじゃないかのォ」 「ははは、常々そう言われるよ。そのせいで齢四十を越えても嫁の一人すら来ない。だが、このコルベールには信念があるッ!」 「信念かね」 「そうだ。この世界の貴族は魔法をただの道具……せいぜいが使い勝手のいい箒程度にしか考えていない。だが私はこう思うのだ、魔法は多様な可能性を秘めている。伝統や格式に捕われていては見えない、光り輝く黄金のような価値が魔法には存在する!」 力強く言い切るコルベールに、ジョセフもまた感じ入って頷いた。 「その通りじゃよセンセッ! わしの世界でも人間は長い年月をかけてコツコツと進歩してきた! その中で世界を進歩させてきた先駆者は、周りから笑われ理解されずとも自分の信じる道を歩んできたものじゃからなッ!」 「そうか、そうやって進歩した技術の結晶がこの義手という訳か! 正直に告白しよう、私は自分の研究が果たして何処に繋がるのかと不安になったこともある! だが君の話を聞いて、私の信念が間違っていないことを知ったッ! ふむ、異世界か……ハルケギニアの理だけが全ての理ではないということか! なんという面白さ、なんという興味深さ! 私はそれをもっと見たい、もっと知りたいッ! 見知らぬ世界で作り上げられた技術にハルケギニアの魔法を加えれば、まだ見ぬ新たな技術が生まれるだろう! 私の魔法の研究に、新たな一ページが書き加えられることだろう! だからミスタ・ジョースター、困ったことがあったら何でも私に相談してくれたまえ! この炎蛇のコルベール、いつでも力になろう!」 二人だけで大盛り上がりするハゲとジジイを眺めていたルイズは、やがて諦めの溜息を深々と吐いた。 男と言うものは群がると時々理解できない話題で自分達の世界を作ってしまう。いつぞやギーシュとヌーベル・ワルキューレを作る相談をしていた時にも似たような光景を見た記憶があった。 ルイズはこれ以上の干渉を断念して、黙って学生の本分に戻ることにした。 昼食時、ウェールズの居室へ昼食を取りに来たジョセフがキリキリしなくなった義手を嬉しそうに見せびらかすのにも、ルイズはただ大きな溜息だけで答えたのだった。 To Be Contined →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1007.html
フーケが破壊の杖を置いて行ったであろう場所は、時を置かず発見できた。 煌々と月明かりが大地を照らすハルケギニアでは、よほどの暗がりでもない限り明かりを用意せずとも光度は問題が無い。 ひとまず用心には用心を重ねようと、シルフィードを離れた場所に着地させ、ハーミットパープルで周囲に怪しい反応がないかも確認する。 だが三人の警戒を無駄にするかのように、ハーミットパープルのレーダーには何も反応を示すことは無かった。 「……ここまでされると本当に何もなかった時がバカみたいじゃの」 「確かにこんなに早く追跡されるだなんて考える方がおかしいんだけど。無用心だわね」 「逆に言えば、裏をかいたという事。今が奪還のチャンス」 そうと決まれば、まだシルフィードの背中ですやすやと寝息を立てているルイズも起こさなければならない。 ジョセフは波紋を練ると、太陽の光のように柔らかく光る両手をルイズの背に当てた。 人間は睡眠に落ちる際に自らの体温を低下させ、目覚めるに従って体温を上昇させる。寝起きが悪いのは体温の調整がうまく出来ないのも一因である。 それに体温が上昇すれば自然と寝苦しくなって―― 「ううっ……あ、暑い……」 ルイズの寝起きの悪さをよく知っているキュルケが驚くほどの早さで、ルイズは覚醒した。 「波紋って色んな使い方があるのねー。私も真剣に覚えてみようかしら」 普段の口調とは違い、かなり真剣に波紋の習得を検討するキュルケにルイズが噛み付くのを適当に宥めつつ、手短に事情を説明してから破壊の杖のある場所へ歩いていく。 そこは森の中でもやや開けた草むらで、その中央には随分と年季の入ったボロボロな小屋が一軒建っていた。 「地図から見るとあっこに破壊の杖があるようじゃな」 ハーミットパープルを使うまでも無く、周囲に人気が無いことは丸分かりである。 とは言え、それでもいざという時に備えて、外に見張りを立てた上で中に入ろうという計画が立てられる。 四人で相談した結果、キュルケとタバサが外で待機し、ジョセフとルイズが小屋に入るということで一応の決着を見た。 ルイズの前に立ち、身を屈めながらも心持ち早足に小屋へ接近すると、扉を押し開けて中へ入る二人。 ジョセフが波紋を全身に回せば、ほのかな光が小屋の中を照らす。 誰もいないと判っているはずなのに、ルイズは懸命に伸ばした腕の先で必死に杖を構えている。 杖の先が緊張を恐怖を如実に表わして震えているのが、ジョセフの苦笑を誘う。 「こらこら。見ての通り誰もおらんじゃろ? 気楽にしとけ気楽に」 「わわわわかんないじゃない、だだだ誰かいたらどうすんのよ!」 年頃の少女にとってはこのような状況が怖くないはずもないし、現にルイズはありもしない敵の幻影に警戒しすぎていた。 その気持ちはわからなくもないので、ジョセフはとりあえずルイズの手を握る。 「な……何するのよっ。勝手にご主人様の手握ってんじゃないわよっ」 目元を赤らめながら顔を背けるルイズだが、それでも無理に手を離そうとはしない。 「まあまあ。この哀れな使い魔めにご主人様の手を握る栄誉をお与えくだされ」 何かを言おうとしたルイズだが、結局しばらく口をパクパクさせた後で頷くだけだった。 とりあえず片手は繋いだまま、ハーミットパープルを発動させる。 手に持った宝物庫の欠片を媒介とした紫の茨は、すぐさまある一点に奔り、一抱えもある高価そうなケースに絡みつく。 「これが破壊の杖か?」 ひとまずケースを開けて確認すれば、その中身にジョセフは思わず驚きを露にした。 「……コイツが破壊の杖じゃと? どういうこっちゃ」 M72ロケットランチャー。映画や雑誌などで目にしたことはあるが、さすがのジョセフも実物を触るのは初めてのことである。 「それが何か知ってるの?」 「ああ。こいつぁ……わしの世界の兵器じゃぞ。なんでこんなモンが……」 手にとって使えるかどうか確認しようとロケットランチャーに触れたジョセフの左手が、今度こそ存在を強く主張するかのように手袋の中で眩く光る。 それと同時に、正確には知らないロケットランチャーの使い方が頭の中に『浮かんで』きた。 その感覚はデルフリンガーを掴んだ時にもあった感覚だが、その時に左手から漏れる光を感じたのはフーケとの交戦時もあわせて、今夜が二回目である。 やっと手袋を脱いで確認すれば、義手に刻まれたルーンが眩いほどの光を放っていた。 「……こいつぁ一体、なんなんじゃ……」 その答えはまだ誰からも提示されていない。ルーンを刻んだ張本人ともいえるルイズも、訝しげな顔をして光っているルーンを見ているだけだ。 「のうルイズや。一体わしに何が起こっとるんか判るかの」 「……えーと、ごめん。私にも何が何だか」 魔法が使えないだけで、様々な知識は豊富なルイズにも判らないとなれば、もはやお手上げとしか言う他はない。 得体の知れない力、という点で言えば生まれ持った波紋や、突然ある日発現したスタンドもあるので、さして不安材料にもならないのだが。 「とりあえずルイズや。こいつぁこっちの世界の人間にゃ使い方が判らんモンじゃからの。ひとまずこいつはわしが持っておく」 断りを入れて、背中にロケットランチャーを背負ってから、改めて狭い小屋の中を見渡す。ここをアジトと呼ぶには、あまりにも生活感の無さが目立ってしょうがない。 「うむ、となるともうここに用はありゃせん。出るぞ、ルイズ」 ルイズと共に小屋を出て、外で所在無さげに待機している二人と合流し、これからの行動を相談することにした。 「えーとじゃな、フーケは今この辺りにおるな。どうやら来た道をトンボ返りしとる」 「まさかまた学院に盗みに行く気かしら? それはそれで気合入ってるわね」 「破壊の杖が目的ではなく、学院を愚弄するのが目的とも考えられる」 「どっちにしたって、私達がバカにされたのは事実だわ! とっ捕まえてギャフンと言わせなきゃ気が済まないわ!」 約一名、バカにされたと憤っている少女が『フーケをとっ捕まえてギャフンと言わせる』のを強硬に主張する。 「んーまあそうじゃな。破壊の杖は取り戻しましたがフーケは逃しました、じゃ画竜点睛を欠くのもいいところじゃしな」 「そうそう。取られたものを取り返しただけじゃ、何の解決にもなってないわ。悪いネズミちゃんは捕まえて懲らしめてあげないとならないものね?」 「今から追跡を再開すれば夜明けまでに追いつく」 「そうとなれば善は急げだわ! さあみんな、フーケを捕まえに行くわよ!」 約一名、ここまであまり役に立っていない少女が意気揚々とシルフィードが待っている場所へと歩き出すが、約二名は苦笑混じりに、残り一名は感情を伺わせない顔をしながら彼女の後ろをついていく。 再びシルフィードが風を捕らえて空に飛んだ時には、ルイズも眠気を訴えるようなことはせずにバスケット一杯のイチゴを食べて目を見開いていた。 「覚えてなさいよフーケ……追いついたらギッタギタのメッタメタにしてやるわ!」 どこぞのガキ大将のような事を言うもんじゃのう、と苦笑するジョセフ。 それから程無くして、地図の上の金貨は小石に追いつこうとしていた。 「よしよし。もうそろそろフーケめに追いつくのう。さてここでわしは挟み撃ちの形を提案したい。四人全員でシルフィードに乗って追いかけても効率が悪いからの」 そこからジョセフは、シルフィードに乗ったまま追跡するグループと、フライで追跡するグループに分かれての攻撃を提案する。 スピードに勝るシルフィード組がフーケの進路に先回りしてフーケの移動を阻害しつつ、自由度に勝るフライ組がフーケを追い詰めるという作戦である。 その作戦自体には誰も異論を挟まない。だがその組分けに強固に反対する少女が一人いた。我らがゼロのルイズである。 シルフィード組とフライ組に分かれるということは、シルフィードを操るタバサは自動的にシルフィード組に回ることになる。 必然的にフライを使える残り一名であるキュルケはフライ組に回る。となると、ジョセフとルイズは別の組に回ることになる。 「ダメよダメよ! ツェルプストーの色情魔とジョセフを一緒にするのは反対!」 「じゃがのう。わしがシルフィードに乗っててもわしは何も出来んぞ。わしがキュルケに連れてってもらって、遊撃した方が戦力的にはちょうどいいんじゃぞ。 わしらじゃシルフィードを満足に操れるかどうか怪しいしな」 それからもしばらく駄々をこねていたルイズだったが、月明かりの下に馬を走らせている、宝物庫襲撃の時と同じローブ姿のフーケが見えるに至り、渋々ジョセフの案を承認した。 「ああん、こんなにダーリンと密着できるだなんてぇ。ダーリンのたくましい身体がス・テ・キ☆」 「アンタ、今からフーケをブッちめるってことを忘れてるんじゃないでしょうね!」 この期に及んでルイズをからかうことは忘れないキュルケと、挑発にいちいち乗るルイズ。 「ほらほら二人とも、そろそろ時間じゃぞ。気ぃ引き締めていかにゃならんぞ」 シルフィードの影でフーケに気取られることのないように距離に気をつけつつ。やがて街道が林の中を通ろうとする段階で、キュルケはジョセフを背負ったままフライの魔法で大空に飛び出し、地表近くの高度を維持してフーケ追跡行に入る。 それを見届けたシルフィードが、一気に加速し、林の木々にぶつからない高度を飛ぶことでフーケの頭上に影を落とす。 フーケは当然時ならぬ影に視線を上げ、頭上にいる風竜が前に回り込もうとしていることに気付き、速度を落としつつ街道を離れようとする。 しかし道の左右は林、夜の道を馬で走ることは非常に難しい。 馬を捨てて林の中を逃げるべきか、それともUターンして来た道を戻るか逡巡したところで、背後から猛スピードで追跡する一つの飛行物体が一気に距離を詰めてくる―― 「追いついたぞフーケッ!!」 キュルケに背負われたジョセフが、左手にデルフリンガー、右手にハーミットパープル、全身に波紋の光を構えて突進してくる! フーケはいちかばちか馬のまま林の中へ入ろうとしつつ、突っ込んでくる二人目掛けて魔法を唱えようとした、が…… 「行ってらっしゃいダーリンッ!!」 キュルケはフライで出せる最大限のスピードを維持したまま、ジョセフはキュルケの背を蹴って跳躍する! 加速したスピードのまま空を飛ぶジョセフは、ハーミットパープルを木の枝に巻きつけて速度を殺しつつも、なおもハーミットパープルをロープ代わりに林の木々を飛んでフーケへ急速接近していく! 「なッ!?」 予想外の行動に、ジョセフに一瞬気を取られてしまったフーケ。 「どこ見てんのよッ!!」 その一瞬の隙が、まだフライを解除していないキュルケの接近を許す結果となる! 全身に風を纏ったまま、ありったけのスピードで空を駆けるキュルケのタックルは、質量と速度が重なることで高い攻撃力を持つに至る。 「ぐはッ!?」 メイジと言えども、不意打ちを食らえばただの人間である。 キュルケのタックルをモロに食らったフーケは馬から落ち、地面に叩き落される。 だがフーケは地面に叩きつけられてなお、降参するどころかなおも抗う意思を示そうと、懐から素早く杖を取り出して呪文を詠唱していく! 「我が下僕達よ!!」 素早い詠唱で完成させた呪文は『錬金』。 ひとまずフーケは自分を囲むように三体のゴーレムを作り上げたが、素早く完成させるだけが取り得の『錬金』で完成したゴーレムは、30メイルのような大掛かりなものではなく、2メイルにも満たない土人形でしかない。 それでも腕力は普通の人間を大きく上回るだろうが、如何せんキュルケとジョセフの前では時間稼ぎ以外の何者でもなかった。 「ハーミットウェブッ!」 「ファイアーボールッ!」 頭上から奔る紫の茨と、正面から放たれる火の塊を防ぐだけで、一体はたっぷり波紋を流され爆散し、もう一体は火球を受け止め燃え尽きていく。 主人を守る為だけにその身を差し出したゴーレムだが、二人はなおも攻撃の手を休めようとせず追い討ちをかけてくる。 「くッ……調子に乗ってんじゃないよッ!」 しかしフーケも、キュルケのタックルを受けて落馬しながらも二人を相手取って戦闘を行おうとする時点で、今まで重ねてきた経験をここぞとばかりに発揮していた。 次に完成させた呪文は錬金ではなく、直前までゴーレムだった土塊を周囲に拡散させる『砂嵐』。 それで僅かにも二人の動きと視界を奪いつつ、意外と俊敏な動きで茂みに飛び込んだ! そしてシルフィード組のタバサとルイズが、シルフィードから降りてその現場に遅ればせながらやってくる次第だ、が。ルイズの不機嫌メーターは非常に危険な水域を示していた。 (何よ何よッ! デレデレしちゃって! 私だってフライさえ使えたら……!) 今頃、あそこで勇ましくフーケと戦っているのは自分のはずだったのだ。 それがあのにっくきキュルケというのがどうにも気に食わない。 今夜はタバサにメイドにジョセフがデレデレしてたのも気に食わないのに(ルイズ視点ではジョセフはタバサとシエスタにデレデレしているようにしか見えなかった)、それだけでは足りないと、よりにもよってあのキュルケとまで! 「このッ……アンタが来なかったらぁ!!」 今にも爆発しそうな(理不尽な)怒りをこらえつつ、茂みに飛び込んだフーケ目掛けて魔法を連発する! だがそれは残念ながら、フーケに利する行為となってしまった。 「ぬぅッ!?」 「きゃっ!? 危ないじゃないルイズッ!」 ルイズの失敗魔法が炸裂したのは、一瞬前までフーケがいた地点でしかなく、そしてそれはジョセフとキュルケからフーケの姿を見失わせ、二人の追撃の足まで止めてしまった。 その絶好のチャンスを指を咥えて見逃すはずも無いフーケは、林の中に微かに差し込む月明かりを頼りに決死の逃走を図る! ここでフーケと追跡者達の現状の差が如実に出た。 数と優位さで勝るジョセフ達に対し、一人しかおらず手負いとなったフーケ。彼女がとる行動は当然、命懸けでその場を離脱して状況を立て直すしかない。 仲間達が行動を共にするジョセフ達に対し、フーケが頼れるのは自分自身しかいない。余裕をもたらした弛緩と、決死の覚悟の差は、フーケの逃走を見事に成功させていた。 「いかんッ……ヤツを見失ったか!」 ハーミットパープルを伸ばし、なおも追跡を続行するジョセフ。 「何してんのよルイズッ! ああもうッ、なんてこと……!」 ルイズをからかう余裕さえ見せず、フーケの逃げた場所に照明弾代わりに火の塊を飛ばし、フーケの逃げた方向を注視するキュルケ。あと一歩のところまでフーケを追い詰めたというのに、それを逃した二人の失望はありありと横顔に出ていた。 ジョセフはともかく、キュルケが自分をからかいさえしないという事実は、ルイズの心を叱責するのには効果抜群だった。 (なっ……何よ! そんな反応するなんてっ……!) ルイズにとって予想外の反応を示されたばかりか、叱る時間も勿体無いとばかりにフーケに注意を傾ける仲間達。 ジョセフはハーミットパープルを伸ばし、直にフーケを追跡する。キュルケは照明代わりに火を飛ばし、隠れる闇を消していく。タバサは風を集めることで音を自分に集め、林の中を逃げるフーケがどこに向かおうとしているのかを感知しようとする。 だがルイズには何も出来ない。 魔法を使おうにも爆発するだけの魔法では、タバサの邪魔まですることになる。 フーケを追う意思だけは他の仲間よりも強いルイズは、意志の強さに反するように、何も追跡に役立つ手段を持ち合わせていなかった。 ――そして、フーケは反撃の体勢を整えた。 林の木々を飲み込みながら、巨大なゴーレムが立ち上がる。 それはジョセフ達を翻弄し、嘲笑ったものと同じ。 30メイルの巨人が、再びジョセフ達の前に立ちふさがる――! To Be Contined →
https://w.atwiki.jp/bsorica/pages/125.html
【ゼロカウンター】手札にあるこのカードは、相手がバースト効果以外でコストを支払わずにスピリット/(アルティメット)/ブレイヴを召喚したとき、コストを支払わずに次の効果をただちに使用できる。■(効果テキスト)。(その後/この効果発揮後)、Xコスト支払うことで、このカードは手札に戻る。 備考 関連 効果一覧
https://w.atwiki.jp/3dspxz2/pages/150.html
エックス&ゼロ(戦闘台詞) キャラ性能は こちら ※青字はエックス 赤字はゼロ /(スラッシュ)で句切られている台詞は、どれかをランダムで言う。 エックスバスター&ゼットセイバー エックスバスター エックスバスター! ゼロバスター ゼロバスター! ゼットセイバー ゼットセイバー! チャージショット チャージショット! フロストタワー&破断撃 トライアードサンダー&龍炎刃 ライジングファイア&氷烈斬 ファイヤーウェーブ&雷光閃 チャージファイヤーウェーブ ファイヤーウェーブ! 雷光閃&双幻夢 幻を見ろ! ラッシングバーナー ラッシングバーナー! 空円斬→雷光閃 アルティメットアーマー&双幻夢 チャージショット→波動拳 今は戦う時なんだ! /この戦いを終わらせる!/決着を付けよう。ここで!/クロスチャージショット!波動拳!/アルティメットアーマーを使う! 雷光閃&双幻夢→空円斬 逃げられはしない!/このまま決めさせてもらう!/運が悪かったな!/双幻夢、フルパワー!/幻の中で、舞え!→回れ!/空円斬! ストームトルネード ストームトルネード!/巻き上げる! カットイン アルティメットアーマーだ!/チェンジ、アルティメット!/強化アーマー、セット!/アルティメットアーマー、装着!/この力、使いこなしてみせる! ノヴァストライク(アルティメットアーマー) フルパワー! トドメ 捕まえた!→落ちろーーっ!/これでトドメだ! 幻夢零 貰った!/斬る!/そこだ! 昇龍拳&龍炎刃 昇龍拳! トライアードサンダー 出力全開!/はあぁぁぁ! 落鳳破 落鳳破フルパワー!/止めは俺がやる!/落鳳破!/ここは俺に任せろ! カットイン 零から生まれた者達よ/纏めて両断する!/俺の全力、このセイバーに乗せる! 幻夢零 零に還れ!/幻夢零!/てやぁぁぁ! ノヴァストライク&雷神撃 登場カットイン
https://w.atwiki.jp/wiki7_mario/pages/121.html
新しい朝、今始まる、つまずいてても、すぐ立ち上がって、勇気の魂に、火をつけろ!!!ゼロ!!ゼロ!!ゼロ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1082.html
学院に辛うじて帰還した四人は、ひとまず報告に行く前に風呂を浴びる。本来ならすぐに行くべきだが、土くれのゴーレムと大立ち回りを繰り広げた四人は埃塗れで、とても人様の前に出られる格好ではないというのが大きかった。 それに夜に出て行って早朝に帰ってきたのだから、そんなに急ぐこともあるまいというオスマンの心遣いもあったのだが。 そして身なりを整えた四人から、学院長室で報告を受けたオスマンは頭を抱えた。 「あー、やっぱ酒場で尻撫でて怒らなかったからっていう理由だけで秘書選んだらあかんかったのう。新しい秘書どうしようかのう」 本気で頭を抱えるオスマンに、ジョセフが呆れて口を開いた。 「のうご主人様や。コレ斬り殺してええんかの」 「俺っちもこれは手打ちにするしかねえんじゃね? とか思うぜ」 「あたしも異論はないけど腐っても学院長だから」 「つまらないことで罪に手を染めてはダメ」 「ヴァリエールの家が罪に問われるから自重なさい」 本人を前にして酷いセリフを言い放題だったが、さすがにオスマンも後ろめたいことがありすぎるので何も言い返せない。コッパゲことコルベールも口笛吹きながら目をそらしている。彼もフーケことミス・ロングビルに誘惑されてあれやこれや話した前歴がある。 「……そ、そうじゃ。とりあえず、ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーの二人にはシュヴァリエの称号授与を申請させてもらおう。ミス・タバサは既にシュヴァリエの称号があるから、精霊勲章の申請でええかの」 空気を変えようと苦し紛れに出た言葉に、ルイズが勢い良く食いついた。 「え!? タバサ……あんたってもうシュヴァリエ持ってたの?」 「シュヴァリエってなんじゃい」 「爵位としちゃ低いけど、純粋な武勲を挙げた時だけもらえる爵位よ!」 必要最低限の説明をしたところで、はた、と気付いたルイズがオスマンに振り返る。 「あの、学院長。ジョセフには何もないんですか?」 「あー……彼は平民じゃからの。爵位や勲章を授与するわけにはいかんのじゃよ」 やや残念そうに答えるオスマンに、ルイズが思わず机に両手をかけて詰め寄る! 「そんな! 彼はフーケ討伐にもっとも尽力したのに、何の褒賞もないなんて……!」 「あーあールイズや、ええんじゃよ。わしには過ぎた御褒美を前払いでもらっとる」 すわ、キスのことをからかうつもりか、と三人の少女に異なった種類の緊張感が走る。 だがジョセフは優しげに微笑むと、ルイズの横に歩いてきて、わしゃわしゃと頭を撫でた。 「こんなに可愛いご主人様の下で働けるんじゃ。老いぼれにゃ過ぎた幸せということじゃよ」 見る見る間に、耳どころかうなじまで真っ赤に染まっていくルイズの顔。 何事かを言おうとして、あ、う、あ、と言葉にならない声を発した後、何かを言おうとするのを諦めた。代わりに、ジョセフの脇腹へ渾身のチョップを叩き込んだ。 それを見てからかうキュルケ、懐から本を取り出して読み始めるタバサ。 わいやわいやと少女達特有のかしましさを目を細めて眺めていたオスマンは、キリのいいところでパンパンと手を叩いて騒ぐのを止めさせた。 「よし、諸君らも疲れておるじゃろうから今日はゆっくりと休みなさい。今夜は予定通り『フリッグの舞踏会』を執り行うからの、寝不足でクマなんか作ってせっかくの美貌を台無しにせんようにの」 その言葉に、三人の少女と一人の老人は横一列に並ぶと、オスマンに一礼し。それぞれ学院長室を後にする。 だがジョセフだけは、ルイズに断りを入れつつも学院長室に残った。 「聞きたいことがあるっつー顔じゃの、ジョースター君」 「お駄賃代わりに色々と聞かせてもらいたいこともありましての」 二人の老人が、ニヤリと笑いあう。 「ミス・ロングビル。お茶を……って、おらんのじゃった」 「なんじゃったらわしが淹れましょうか」 「いやいや、魔法で何とかするわい。これから練習もせにゃならん」 おっかなびっくり淹れた茶を飲みながらの、文字通り茶飲み会議が始まった。 破壊の杖に関する経緯を聞き、ハーミットパープルは内密にと言う根回しを経た上で、ある意味本題とも言える左手の義手に刻まれたルーンを見せた。 「ここに来てからというもの、わしには色々と説明し辛いことが多々起こりましての。わしの見立てでは、おそらくこいつが原因ではないかのうと」 ジョセフの言葉と、鉄の義手に刻まれたルーン。 それらを勘案しながら、オスマンはズズ、と茶を啜った。 「それに関しては既にミスタ・コルベールが調べておった。それは『ガンダールヴ』の紋章と言って、伝説の使い魔に刻まれるルーンだということじゃ。 今では失われた『虚無』の使い手の使い魔の証であると同時に、この世に存在する全ての武器や兵器を扱うことが出来る能力を持つ、ということじゃの」 オスマンの言葉を聞きながらも、やや首を傾げてジョセフが問う。 「武器や兵器……ということは、わしには波紋と言う力があるのですがの。その波紋を身体に流した時もどうやらガンダールヴの効果が出ているようなんですじゃ」 「その波紋と言う力がどういうものかは詳しく知らんが、それが『戦う為に生み出された技術』であるというなら、生身でも武器や兵器と認識されたのかもしれんのう」 「……まあ、一概に違うとは言い切れませんからの。ですが……わしがガンダールヴということなら、ルイズは虚無の使い手じゃと考えていいんですかの」 冷め掛けた紅茶のカップを手の中に残したままの質問に、オスマンは眉を顰めた。 「十中八九……とまではいかんが、わしらはそう考えておる。じゃが、現在では虚無の使い手はおらんし、この学院でも当然虚無の使い方を教授することはできん。 そして虚無の力があるとなれば、ミス・ヴァリエールが望むと望まんに拘らず、厄介事に巻き込まれる危険性も孕んでおる。そのため、もうしばらく……彼女には、『ゼロ』の仇名を甘受させる事になる。教師としてこれほど酷い仕打ちはないとは思うとるんじゃが」 辛そうに言葉を紡ぐオスマンを見ながら、ジョセフはカップに口をつけた。 いじめにも似た境遇を把握していながらも、それを解消する為の手段を見つけられずに手をこまねくしか出来ない悲痛を、白い髭の向こうに見取ることが出来た。 だからジョセフは、緩い笑みを浮かべて、言った。 「何。わしはヤンチャな娘を育てた事もありますし、手の付けにくい孫もおりました。それに比べたら、ルイズはワガママな子猫みたいなモンですじゃ。それに僭越ながら、あの子は意外と芯の強い子ですからの。どうか見守ってやって下され」 精悍な顔立ちと、年には似付かない鍛えられた肉体を持つ目の前の使い魔の言葉。 オスマンは、満足げに頷いた。 「この世界には『メイジの実力を見るには使い魔を見よ』という言葉がある。言葉通りの意味もあるんじゃが、メイジが召喚する使い魔は最もそのメイジに見合った使い魔が召喚される、という意味も持ち合わせておるんじゃ。 ジョセフ・ジョースター君。君はきっと、ミス・ヴァリエールが必要としたから、この世界に召喚されたんじゃろう。もうしばらく、君に苦労を背負わせる事になってしまうが。是非、あの子を見守ってやって欲しい」 ジョセフは、普段通りのニカリとした笑みを浮かべた。 「さっきも言いましたじゃろ? わしは可愛らしいご主人様の下で働くことが出来ること自体が過ぎた幸せです、とな」 その日の夜、『フリッグの舞踏会』は盛大に執り行われた。 土くれのフーケを学院の生徒が急遽追跡して捕縛した、ということで、その中心である四人は自然と舞踏会の主役になることが決定していた。 ジョセフは壁際で御馳走片手に友人達に武勇伝を語って聞かせ、キュルケは言い寄ってくる男達に囲まれて引く手も数多。タバサは巨大なローストビーフと格闘しつつも、追加される料理にも一通り手を出し続けていた。 そして、最後の一人は、やや遅れて登場した。 衛視の大仰な呼び出しの後、壮麗な門から現れたルイズの姿は、ジョセフでも「おぅ」と目を釘付けにしてしまうような、パーティードレスを見事に着こなした姿だった。 立ち居振る舞いは確かに由緒正しい公爵家の御令嬢であると証明していた。 (馬子にも衣装……つーのは違うのう。なんのかの言ってお貴族様なんじゃよなあ) と、普段の子猫っぷりとはまた違った雰囲気の淑女を見ていれば、ジョセフの姿を見つけたルイズが、優雅だけれど少々早足に彼の元へと近付いてきた。 そして友人達の輪が自然と彼女を迎え入れる形で開くと、ルイズはジョセフの目の前で立ち止まり、ぐ、と顔を見上げる。 「……ええと。ほら、あれよ。ちょっと、こっち来なさいよ」 「おいルイズ、ジョジョを独り占めしてんじゃねーよ」 ジョセフを有無を言わさず連れ出すルイズに、友人達から不服げな声が漏れるが、ジョセフは微苦笑を浮かべながらも片手で作った手刀をかざし、すまんの、と口だけで言葉を残した。 そのままパーティー会場のバルコニーへ来た二人は、夜空の空気に身を晒しつつ、何を言うでもなく手すりに腰掛けて横に並んだ。 「……あの、その。ちょっと、色々と聞きたい事があるのよ」 「わしに答えられることならなんなりと、ご主人様」 緩く指を絡めて手を組み合わせたジョセフを、ルイズは横目で見やる。 「その……ジョセフ。あんたは……元の世界に、帰りたい?」 「帰りたくないって言ったらウソになりますわい。向こうに家族を残してますからの」 静かに問いかけてくる言葉に、ジョセフは嘘を並べる事を選ばなかった。 「……そう」 ルイズの返事が寂しさを隠さなかったことは、誰が聞いても明らかだった。 「……私も、出来る限り……ジョセフが元の世界に帰る手段を探してみる、わ」 それだけ言って、会場に戻ろうとするルイズの手を、ジョセフがそっと掴んで止めた。 「待って下され、ご主人様や。帰りたいと言うのはウソじゃありませんがの。可愛いご主人様に仕えるのが幸せだというのも、ウソじゃないんですぞ」 「……ウソ」 「じゃからウソじゃないんじゃって」 いつものように頭をわしゃわしゃと撫でようとして、美しくセットされた髪を崩すわけにはいくまい、と、代わりに柔らかな頬を撫でた。 「もし帰る術があるなら、わしはきっと元の世界に帰りますがの。帰る事が出来ないなら、ワガママじゃが可愛らしい主人の側で生きるのも悪くはないだろうというのも、これまたわしの偽らざる気持ちでもあるんですじゃ」 「……だったら、どうせならウソでも、『帰る気はないです』って言ってよ。……なんだか、悲しい気持ちになるわ」 見て判るほどに潤んだ瞳で自分を見上げるルイズを、ジョセフは静かな笑みと共に見下ろした。 「敬愛する主人じゃから、ウソはつきたくないという気持ちだってあるんじゃよ。特に、最初のうちはウソの吐き通しだったからな」 「……いい年してっ。ウソも方便、って言葉も知らないのかしら。時と場合を考えなさいよ」 憎まれ口を叩きはするものの、頬に当てられた手を振り解こうともせず、ただされるがままになっていた。 ふと沈黙が訪れたが、僅かな間を置いて会場のオーケストラが音楽を奏で始めた。 「……ね、ジョセフ。ダンスは、出来るの?」 唐突な問いだったが、ジョセフは緩い笑みと共に言葉を返す。 「ダンスも小さい頃に仕込まれとるし、ニューヨークでもたまにダンスパーティーにお呼ばれされるがの」 「使い魔のくせに、ダンスまで出来るだなんて。ナマイキだわ」 そう言って、そっと手を捧げた。 「せっかくだから、踊ってあげてもよくってよ」 ジョセフは捧げられた手を取り、恭しく手の甲にキスをした。 「うむ、喜んで」 「ダンスの誘いをお受け下さり、光栄ですわ。――『ジョジョ』」 主人の口から零れた呼び名に、少しだけ驚いたように目を見開いたが、すぐに微笑みに変わる。 「……あによ。友人には、ジョジョって呼ばれてるんでしょ」 「ああ、その通り。友人にはジョジョと呼ばれておる」 ぷ、と頬を膨らませるルイズと、笑みを噛み殺すのに必死なジョセフ。 そのまま二人は会場の中央に向かった。 主人と使い魔が、手を繋いでダンスを踊ろうとする。 言葉だけで考えれば、非常に奇妙な光景である。 だが二人は、周囲からの奇異の視線に頓着する素振りさえ見せず、手を取り合った。 「おでれーた。主人と使い魔が、ダンスをするだなんてな。6000年生きてきたが初めて見ちまうぜ」 壁に立てかけられているデルフリンガーは、楽しげに鞘口を鳴らしていた。 To Be Contined →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2291.html
八話 前衛に二振りの剣を構えるワルキューレ、そして後衛に剣と盾を装備したニ体のワルキューレを置くルイズ。 対するホワイトスネイクはゆるりと構える。 時刻はすでに午前二時を回った。 部屋を照らすのは薄明るい魔法灯だけ。 部屋の壁には5つの影がゆらゆらと踊り、しかし空気は張り詰めている。 さながら嵐の前の静けさのように、ルイズとホワイトスネイクは静かに対峙していた。 直後、ルイズの操るニ刀のワルキューレがホワイトスネイクに斬りかかる。 ホワイトスネイクは素早く一歩引くことで回避する。 ワルキューレはその後を追わない。 後衛のワルキューレニ体が即座に切り込める位置ならば、 昼間ホワイトスネイクが見せたあの「体術」も使えないだろうが、 そうでなければ一瞬で無力化される。 いくらホワイトスネイクが丸腰で、いくらワルキューレが剣二振りで武装していようと、 ホワイトスネイクの体術は侮れない。 「……踏みこんでこないの?」 ルイズが緊張した声で言う。 「踏ミ込メバニノ太刀デ串刺シ、ダロウ? 見エ透イテルゾ、ルイズ」 あっさりと策を看破され、思わずルイズは唇をかんだ。 前述したように、後衛に二体のポーンを配置したのはホワイトスネイクの隊術を封じるためだが、 ルイズが考えた投げ技封じの策は、実際には二段構えだった。 そのために前衛のワルキューレにふた振りの剣を持たせているのだ。 目の前にいるワルキューレの得物が一振りだけだったなら投げ技も十分可能だったろうが、 この二刀のワルキューレの初太刀をいなして踏みこんでも、ニの太刀で串刺しにされるのがオチだろう。 そういう策だった。 だがそんなことぐらいホワイトスネイクだって分かっていた。 だから踏み込まなかったのだ。 「ツイデニ言ウナラ……後ロノ『ポーン』ニ体ハ私ニプレッシャーヲカケルタメニ置イテルダケダナ? ソノ人形ドモヲ全部同時ニ操レル自信ガナイカラッテ、セコイ真似ナンカシテ。 ミミッチイナ、ルイズ……ソンナノデ私ヲ殺セルノカ? イヤ……『勝つ』、ダッタカ?」 後方に控えるニ体のワルキューレの意義まで看破された。 思わずルイズは動揺する。 こいつ、なんてヤツなの? こんなヤツに……わたしが勝てるの? 「一瞬考エタナ」 「え?」 思わずルイズがそう聞き返したとき、すでにホワイトスネイクは二刀のワルキューレとの間合いを詰めていた。 慌ててルイズがワルキューレを動かしたとき、すでにホワイトスネイクはルイズの目の前にいた。 そしてルイズがそれを理解したとき、すでにホワイトスネイクは貫手を引き絞っていた。 その狙いは、ルイズの額。 「ソノ差ガ命取リダ」 ドシュゥッ! 空気を切り裂き、ホワイトスネイクの貫手が迫る。 思わず目をぎゅっとつむるルイズ。 悲鳴は上げなかった。 いや、上げるヒマさえなかった。 ただ、貫手が自分の頭を砕き、貫くのを待つだけだった。 だが、その瞬間はいつまでたっても訪れなかった。 ルイズが恐る恐る目を開けると、ホワイトスネイクの貫手は、ルイズの額の紙一重手前で止まっていた。 ホワイトスネイクは、最初からルイズを殺す気などなかったのだ。 「……どういう、つもりよ」 震える声でルイズが言う。 「私ハルイズニ『立チ向カウ感覚』ヲ手ニ入レテ欲シカッタノダヨ」 「ど、どういう意味よ!」 「ドートイウコトハ無イ。 私ニ対シテ使イ魔ダ何ダト威張リクサッテイル小娘ガ、 肝心ノソノ使イ魔相手ニビビッテルンジャア話ニナランカラナ」 「な、何ですって!?」 「ソウ、ソレダ」 「へ?」 「ルイズハ一見気ガ強ク勇敢ナヨーニ見エルガ、ソノ実タダ強ガッテイルニ過ギナイ。 犬ガ吠エテルノト同ジナンダ。 本気デ立チ向カウ気ナンカ無イクセニ、チッポケナ自分ヲ満足サセルタメニナ」 ホワイトスネイクの言葉はあまりにも残酷だった。 遠慮のカケラさえもない言い草だった。 だが……ルイズは言い返せなかった。 事実として、自分は昼間の決闘でのホワイトスネイクを「怖い」と思った。 そればかりではない。 ホワイトスネイクがやられそうだと思った時には目も背けた。 いつもは「貴族らしく」とか考えてるくせに、実際の自分はちっとも貴族らしくないのだ。 ついさっきだってそうだ。 ホワイトスネイクが自分に貫手を打ちこむ瞬間、目をつむった。 勝つとか倒すとか大言壮語ばっかり吐いたくせに、結局自分は自分が大事だった。 貴族らしさなんて、どこにもなかった。 それが分かってしまった。 だから、言い返せなかった。 「トハ言エ……サッキハ『勝ツツモリ』ハアッタヨーダカラナ。昼間ニ比ベレバ立派ナ進歩ダ。 ソレニ免ジテ……ソーダナ……」 ホワイトスネイクはそう言うと、ルイズの額から一枚のDISCを抜き取った。 それと同時に、ワルキューレが大きな音を立てて地面に倒れこむ。 抜き取ったDISCはギーシュの魔法の才能だった。 そして、さらに腕から一枚のDISCを抜き取った。 「ギーシュ・ド・グラモンノ魔法ノ才能、ソシテ記憶ノDISCダ。コレヲオ前ニクレテヤル」 「え? そ、それって!」 「サッキ言ッテタヤツダ。 コイツヲギーシュノ額ニ差シ込ンデヤレバ、スグニ目ヲ覚マスダロウ。 サッサト奴ノトコロニイッテ、元ニ戻シテヤルンダナ」 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」 「何ダ?」 「あ、あんた一体、どういうつもりよ! 自分のことを悪党みたいに言ったくせにこんなことして、あんた一体何が目的なの!?」 「目的……カ。ソーダナ……」 ホワイトスネイクは考え込むように顎に手を当てる。 「トリアエズハオ前ニ成長シテモラウコトダナ」 「何よそれ! っていうか何であんたが私のことを気にしてんのよ!」 「スルニ決マッテイル。私ハルイズカラスタンドパワーヲ貰ワナケレバ生キテイケナイノダカラナ。 私ハ『精一杯努力したけど結局立派なメイジになれなかったルイズ』カラ記憶ヲ奪ッテヤルノヲ 当分ノ生キ甲斐ニスルカラ、ソレマデハ生キ続ケナキャアナラナイ」 「結局……自分のため、ってこと?」 「当タリ前ダ。何故ナラ私ハ、」 そこで言葉を切ってルイズの顔に覗き込むようにして自分の顔を近づけると、 「悪党、ダカラナ」 そう言って、ホワイトスネイクは音もなく消えた。 ホワイトスネイクが持っていたギーシュの二枚のDISCが軽い音をたてて床に落ちたのと、 「ミス・ヴァリエール、起きていますか?」 軽いノックとともにミス・ロングビルの声がルイズの部屋の中に投げかけられたのはほぼ同時だった。 「起きていますか、ミス・ヴァリエール? オールド・オスマンがお呼びです」 再びロングビルの声が響く。 だがルイズはそれに答えない。 「……入りますよ」 そう一言言ってロングビルがドアを開ける。 「どうしました、ミス・ヴァリエール? オールド・オスマンがあなたをお呼びです。聞こえていたでしょう?」 「……今から、行きます」 ロングビルの問いにルイズはただ短く答えた。 それをロングビルは少し不審に思ったが、何も詮索せずに「ついてきてください」とだけ言って部屋を出た。 ルイズはその後に続いた。 爪が手のひらに食い込むほど、拳を握り締めて。 こぼれおちそうになる涙を、必死で目の中に留めて。 何もできなかった。 何も言い返せなかった。 「勝つ」だなんて大きいことを言っておいて、結局何もできずに負けただけ。 勝ち取って得るはずだったギーシュの記憶も才能も、 金持ちが乞食に残飯を恵んでやるかのような形で「与えられた」だけ。 結局自分は口ばっかりで、臆病で、無力で、「ゼロ」だった。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 勝負の上でも、そして精神の上でも、生まれて初めて完全に敗北した夜であった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5451.html
「魔法陣グルグル」より、原作終了後のニケとククリを召喚。 魔法陣ゼロ-01 魔法陣ゼロ-02 魔法陣ゼロ-03 魔法陣ゼロ-04 魔法陣ゼロ-05 魔法陣ゼロ-06 魔法陣ゼロ-07 参考:魔法陣グルグル(Wikipedia)
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1171.html
「…………」 「…………」 学院長室にて、オスマン氏とコルベールが遠見の鏡を呆然としながら眺めている。 「…………」 「………み、ミスタ・ココペリ」 「…………」 「…ミスタ・コエムシ、聞いとるのかね?」 再度オスマン氏がコルベールに呼びかけるが、まったく反応が無い。 「……おい、毛根全滅男」 「誰の毛根が全滅しているんですか!まだサイドは生き残ってます!」 「もういっその事、そっちも剃った方がすっきりするような気もするが…」 「私は諦めません!諦めは何も生まないという事を、私は知っています!」 「まあ、それは良いとして。見たの?」 「ええ見ましたとも!彼は…彼はやはり『ガンダールヴ』なんでしょうか?」 「どうじゃろうな…」 オスマン氏が口髭をいじりながら答える。 「それにしては……『ガンダールヴ』は始祖ブリミルが、呪文詠唱中の 無防備な状態を守るために用いたと言われておる」 「はい…姿形は記述がありませんが、その力は千人の軍隊を一人で壊滅させ、 並みのメイジではまったく歯が立たなかったと!」 「そして伝承にはこうもある。 『ガンダールヴ』はあらゆる『武器』を使いこなし、敵と対峙したと…」 「はい」 「『武器』……使っとらんかったの」 「あっ!」 「というか、あれで『武器』なんかいるのかのう?」 「そ、そうですね………」 感じる!今どこかで、俺の存在意義が否定された! このデルフリンガー様の存在意義が…ッ! 「ま、それはそうとして…彼は本当にただの平民だったんじゃな?」 「はい、どこからどう見ても。念のためにディティクト・マジックで確かめたのですが 反応は無く、正真正銘ただの平民の少年でした」 その言葉を聞いて、オスマン氏は頷く。 「うむ、ではあの少年はどうやってあの姿になったんじゃ? 魔法も使わず、どうやってゴーレムを溶かしたのじゃ?あの雷は? そして…あのグラモンの息子をどうやって治したと言うんじゃ?」 「それはその…先住魔法でしょうか?」 口ごもりながらコルベールが答える。 「では何故君のディティクトマジックに反応がなかったのかのう? 先住魔法も魔法の力、まったく反応がないという事は無かろう」 「………わ、わかりません」 その言葉にため息をつくオスマン氏。 「うむ、ではあの少年を召喚した生徒は誰なんじゃ?優秀なメイジなのかね?」 「いえ、召喚したのはミス・ヴァリエールで…真面目な生徒ですが、メイジとしては…」 「謎がまた一つというわけじゃ…」 「と、とにかく彼が『ガンダールヴ』であろうと無かろうと、これは一大事件です! 王室に報告して、指示を仰がない事には」 「それはならん!」 オスマン氏が厳しい声でコルベールの提案を否定する。 「し、しかし…」 「ミスタ・コルベール!宮廷で暇をもてあましとる連中に、あの少年とその主人を 引き渡したらどうなると思う!?」 ハッとなってオスマン氏を見るコルベール。 「彼奴らはあの『力』を手に入れようと躍起になるじゃろう! 二人の命を彼奴らが考慮に入れると思うかね?…君ならわからんでもあるまい」 「………はい」 オスマン氏の言葉にコルベールは過去を思い出していた。 かって自分が隊長を務めていた、魔法研究所実験小隊での最後の任務を。 ダングルテールで自分が犯した、消す事のできない罪の記憶を… 「ありがとうございます、オールド・オスマン。私は危うくまた…」 「よいよい……… 言っても無駄じゃと思うが、あまり自分を責めてはいかんぞ。 君は上から命令に従っただけじゃ、悪いのは、腐った宮廷の連中じゃよ」 「すいません、学院長…」 重苦しい空気が流れる中、オスマン氏が口を開く。 「とにかく、このまま放っておくわけにいかんじゃろう。 まずはあの少年から直接話を聞かねばな」 「では私が彼を連れてきます!」 「いや、その必要は無い」 外に飛び出そうとするコルベールを、オスマン氏が引き止める。 「おー、相棒。災難だったな…」 呆然とするルイズの手から放たれたデルフリンガーの声に、育郎がルイズたちに気付く。 「デルフ!それにルイズも…」 「ひでーぜ相棒!俺を放っておくなんて。 なんか俺いらねー子になったんじゃねーかって、不安で不安で仕方が無かったぞ」 そう言いながらも、どこかデルフの声は嬉しそうだった。 「すまない、デルフ…」 「わ、わかってくれればいーんだよ。というか、これからどうすんだ相棒」 「…………」 その言葉に、途端に押し黙る育郎。 このままではルイズに迷惑をかけてしまうかも知れない… 姿を消そう!誰にも会わず、誰にも見られず……… 「相棒…行くんなら俺もついてくよ」 「デルフ…」 「おっと、気にする必要はねーぜ。俺は剣で、相棒だからな。 それに俺がいたほうが便利だって。だからさ、置いてかねーでくれよ…」 「さっきから何を言ってんのよ…置いてくって?」 それまで黙っていたルイズが、そのやり取りに不安を感じて会話に割り込む。 「ルイズ…すまない」 「な…何謝ってるの?その、あの事を黙ってたのは許してあげるから…」 そんな事を言っているのではないとわかっている。彼らが何を考えているのかは、 鈍いルイズでもうっすらとは分かってはいたが、それを口にするのは嫌だった。 「娘っ子…短い付き合いだったな」 「ごめんね、使い魔になるって約束したのに」 「ちょ、ちょっと待ってよ!」 育郎は、ルイズの手からデルフリンガーを受け取ろうとするが、ルイズはデルフを 離そうとしない。 「な、何なのよあんた!?あんな格好になれると思ったら、今度は…」 それを言うのは嫌だったが、口にしなければならない。 「どっか行っちゃうつもりだなんて!どういうつもりのなのよ!?」 「そう言うなよ、相棒も娘っ子の約束を破る事になってつれーんだ」 「だったらなんで!?」 「あのな、娘っ子。黙ってたのも、これから行くのもな…… みーんな娘っ子を心配しての事なんだよ。だからあんまり相棒をこまらせんな」 「………え?」 今のルイズには予想だにしなかった言葉だった。一瞬体から力が抜け、その隙に育郎は ルイズの手からデルフを奪い取る。 「さよならルイズ…」 立ち去ろうとする育郎を、ルイズはなんとか止めようとしがみついた。 「だ、だからちょっと待ちなさいって!」 「そうです、ちょっと待ってください!」 まだ呆然としている生徒達の中から、誰かが二人に声をかけた。 「貴方は、ロングビルさん!?」 しかして、群集を掻き分け現れたのは、オールド・オスマンの秘書、ミス・ロングビル その人だった。 「イクロー君。学院長がお呼びです、いっしょについて来てもらえますね?」 ここから去るのは、学院長の話を聞いてからでも遅くないですよ。 どこか…頼れるところがあるわけじゃないでしょ?」 「ですが…」 渋る育郎に、ミス・ロングビルは育郎の手をとり続ける。 「無理やりにでもついて来てもらいますからね。それが私の『仕事』なんですから。 来てもらわないと、私が叱られちゃいます…だから、ね? イクロー君は私が叱られても良いなんて、冷たい事は言いませんよね?」 そう言って、少し悪戯っぽく微笑む。その顔に、さすがに育郎の表情も少し弛む。 「わかりましたロングビルさん」 「それじゃあ」 ミス・ロングビルの後について歩き出す育郎。 「って相棒、娘っ子はいいのか?」 「……ハッ!ちょ、ちょっと私も行くから待ちなさい!」 デルフリンガーの言葉に状況について行けなかったルイズが、二人の後を追いかける。 「ていうか何でミス・ロングビルと知り合いなの!?なんか仲良さそうだし!?」 なんだか良く分からないが、腹が立ってくるルイズであった。 「まさかこのような事態を見越して、ミス・ロングビルに使い魔をつけているとは… 学院長の深謀には恐れ入ります」 コルベールの賞賛の言葉に、ばつが悪そうにオスマン氏が首を振る。 「いや、二人の仲人を勤めるかもしれんのーとか思っての…ほら…なりそめとか… それに盛り上がりようによっては、今日にでもおっぱじめるかなーとか、若いし」 「…………」 「……はっ!」 ルイズが去った後、決闘の観客の一人だったキュルケがようやく自分を取り戻す。 「た、タバサ、彼って一体…」 隣にいる親友、いつも本を読んでいて、大抵の事は知っている青髪の少女に話しかける。 「………」 しかしタバサからの返事は無かった。 「…タバサ?」 そしてキュルケは気付いた。 「た、立ったまま気絶している………ッ!?」 悪 魔 降 臨 !! 変身する育郎を見て、そんな風な言葉を連想したとかなんとか。 なんかこう、生っぽい変身は反則とか、心の準備が欲しかったとか。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/734.html
ドスッ!! 「な・・・」 (くっ・・・ガキどもに紛れているとは・・・心臓をやられてしまったからリプレイできねぇ・・・ 後少し…後少しで…ボスの手がかりが掴めると言うのに・・・俺は・・・終り・・・か・・・) 死により意識が遠のく寸前、誰かの声が聞こえてきた 「まだやれるさ、アバッキオ」 「?なんでオレの名を・・・・・・・知っているんだ? ・・・あんたは・・・・!!そうだ!!あんたはッ!! あんたはオレがワイロを受け取ったせいで撃たれて殉職した・・・・・・・!! 」 「アバッキオ お前はりっぱにやったのだ。私が誇りに思うぐらいにね。そしてお前の真実に『向かおうとする意思』は あとの者たちが感じとってくれているさ 大切なのは・・・・そこなんだからな」 「・・・あぁ、だからこそ最後に俺がやるべき任務は終らせる、ムーディブルース!!」 バゴォッ!! (ボスの顔と指紋だ・・・後は・・・任せたぜブチャラティ・・・ジョ・・ル・・・・ノ) 新たな進むべき道を選択したブチャラティ達を水平線から消えるまで二人は佇んでいた。 「・・・もういいのか?アバッキオ」 「…ありがとうよ、あんたが俺を支えてくれたおかげで俺はあいつ等にボスの手がかりを渡す事ができた…」 「いや…私は何もしてないさ、私はただきっかけを与えただけに過ぎない」 「そうか・・・んじゃ行くか」 「あぁ・・・ん?何だこの鏡?」 「あん?」 突如殉職した警官の前に現れた銀鏡、それを見た瞬間俺の中で「これは…ヤバイ」とアラームがなった。 「下がれっ!!」 警官を掴み自分の後方に投げつけた瞬間、鏡は行き成り進路を変えアバッキオを飲み込むように包んでゆく。 「なっ、アバッキオ!」 「来るなっ!!あんたも巻き込まれるぞ!!…チッ、やっぱギャングだから地獄逝きだな…」 「アバッキォォオオオ!!」 そして無重力の空間かのように体の感覚がおかしくなり・・・俺の視界は闇に閉ざされた・・・ 空は晴天、風は特に無し。ピクニックにはちょうどよい天候であった。 そんな中、トリステイン魔法学院の2年生たちは各々が召喚・契約した使い魔たちを自慢しあっていた。 ……ただひとり、ルイズ・フランソワーズ(中略)・ヴァリエールを除いてだが… 少々頭が寂しくなってる頭を持つ中年の男性が本日最後の召喚儀式を行う者の名まえを読み上げた。 「ミス・ヴァリエール。召喚の儀式を」 「はい!」 はきはきとした声でピンクの髪の少女が返事をした。 その声とは正反対に周りのギャラリーとしている少年少女たちは 「おっ、とうとうゼロのルイズの番だぜ!」「また爆発だろうな…」 「せっかく召喚した使い魔をすすだらけにしたくないから下がってよっと」 「逆に考えるんだ失敗しないルイズはルイズでは無いと」 …少女は少しこめかみをピクピクさせたが、すぐ気を取り直し呪文を唱えた。 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッゴォオォォォン 「…またか…」「まぁ何時もどおりと言えばそれ以上でもそれ以下でもないな…」 「Oh,my god 僕の使い魔がすすだらけにぃぃぃいい」「もうここまで来ると…ブラボー!おお…ブラボー!!」 周りの少年少女達はルイズが魔法を使うと爆発が起こるという事を非常識を常識としていたので、 焦らず普段どおり嘲笑の言葉を次々と爆発の張本人に送っていった。 (…どうして…どうして爆発だけなのよォオオオ~~~~~~~~ッ!!) ルイズは心の中で絶叫していた。まいどまいどの事とは言え初歩の初歩であるサモン・サーヴァントにまで失敗 …成功率ほぼ100%と言われるこの呪文にまで失敗する…私は魔法が全く使えないの運命だろうか… と深淵の底まで落ち込みながら「死にたくなった。」と言う誰かの幻聴まで聞こえ出し、目の前をぼーぜんと見ていると、 ふと周りのギャラリーの「あれ…?何か煙の中にいる…?」とつぶやきが耳に入った。 爆風によって見えにくくなった視界だったが何かの影がある事に気づいたので、 目を凝視してみると段々と煙が晴れてきその影…いや人影が倒れていた。 何か卵の殻のような帽子を被っている。 煙が完全に晴れるとルイズはゆっくりとその人物に歩いて行き見下ろしてこう言った。 「あんただれ?」 「あんただれ?」 「あ・・・?・・・ここどこだ?天国・・・ってわけじゃなさそうだな」 目の前にはピンク色の髪をした少女ってかガキがいた。 周りを見渡すとローブを羽織った怪しいガキども、頭のてっぺんがつるつるな中年の男 そしてわけわからん生物…まるでナランチャがフーゴに読んでくれってねだっていたファンタジーって光景だな・・ (まぁ、フーゴが仕方なしに諦めて読もうとして「何でファンタジーって言いながらSFの本持ってくるんだよ! このど低脳がぁあああ」とプッツンしてた気もするが・・・) ガキがよく読む絵本のような光景が俺の前に広がっていた。 「質問に答えなさいよ!」 「うっせぇなぁ…ちったぁ落ち着けや、何なら茶飲むか?」 「へ…平民風情の分際で貴族にそんな物言いする気!!」 「貴族に平民だぁ?」 周りの空気と建物的にヨーロッパのどっかのド田舎って感じだと思ったが、貴族やら平民やら… 時代錯誤もここに極まりって奴だな・・・ 「ん?待てよ、何で俺生きてるんだ?」 さっき俺は死んだと思ったのに銀鏡に吸い込まれた事により生き返った…?新手のスタンド使いにしちゃ 殺意が無いうえに、何故俺を生き返らすんだ…?それとも…罠…にしてはここまで移動させる意味が無い… と俺が考えている間にピンク髪のガキは中年のおっさんの方に 「ミスタ・コルベール!」 「何だね?ミス・ヴァリエール」 「再召喚させt「ダメだ」 「・・・まさかあの平民と契やk「神聖な儀式だからやり直しは認めない」 「「・・・」」 ・・・何か知らんが口論は終ったようだ・・・ ピンク色の髪をしたガキは俺をかなり恨めしそうな目で睨んでいるが知ったこっちゃ無い。 「感謝しなさい、平民が貴族にこんなことされるなんて一生ないんだから」 そんなえらそうな態度で言われても感謝できねーっつの 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 反射的に体をねじらせピンク髪のガキのキスを避ける。 「何で逃げるのよ!」 「何でキスしようとするんだ!!」 「だってあたしが召喚した使い魔だから契約しないといけないんじゃない!!」 「あん?って事はお前が俺を呼び出したって事か?」 「そうよ!!だからおとなしk「分かった」 「聞き分けいいわね・・・んじゃ「何を言ってるんだ、俺は帰らせてもらうぜ」 「な・・・何で平民の分際で逆らうのよ、第一どうやって帰るのよ!!」 「こうやるんだよ、ムーディブルース!」 アバッキオは構わず自分の分身でルイズをリプレイし始めた。 「な・・・何よこれ!何で私がいるのよ!!説明しなさいよ!!理解不能!理解不能!!」 「説明する気はない、これでさっき俺を呼んだ鏡が出たらそこに飛び込む・・・それだけだ」 周りは突如二人に増えたルイズが居る事が理解できずに沈黙かルイズと同じように理解不能!理解不能!!と叫んでいる。 しかしコピールイズは構わず詠唱する。・・・だがアバッキオは一つのミスを犯していた。それは・・・ 「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ… 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ 私は心より求め、訴えるわ 我が導きに…答えなさいッ!!」 ドッゴォオォォォン ルイズが呪文を唱えると必ず爆発すると言う重大な欠点がある事を知らなかった・・・。 「なぁあああにぃいいいいい!!」 何の脈絡も無い爆発に思わずどこぞの吸血鬼のような発言をしてしまい、爆風に吹き飛ばされてしまった。 (ちっ、まさか爆発するとは、だが早くあの鏡に飛び込まなくてはブチャラティ達に追いつけなくなる。 何で生き返ったかはまだ理解できねぇが…戻ってから考えるか・・・) 速やかに脱出しようとしたが、後鏡まで1mと言う時点で何かが悲鳴をあげながら鏡からアバッキオ目掛けて飛んできた。 「どわぁああああ」 「チッ」 何とかジャンプに成功し、鏡から出た何かをかわし鏡に飛び込んだ・・・と思ったら もう・・・鏡は消えていた。 「クソッ、何だ今出たのは…」 振り返ると…青と白のパーカーを着たアジア系のガキ?がヘッドスライディングしてる…? 何か関わりたくないが一応起こすか、茶で気つけしてやりたいがここだとさすがに作るのはまずい。 本当ならケリ入れたいが・・・平手打ちで起こすか… 「お~ぃ起きろ~」ペシペシ 「うぅ・・・ん?ここどこだ?」 「ん~…一応あいつらの会話聞く限りトリスティンって所らしいが…ところでお前の名前は?」 「あっ、俺の名前は才人、平賀才人って言います」 あぁ、またここに被害者が追加されるとは何て運命・・・ マルコリヌ 2回目の爆発時にキュルケに盾代わりに使われ重傷 再起可能 ギーシュ 2回目の爆発時に気絶したモンモラシーを人工呼吸と言う名目で服を脱がそうとした所で モンモラシーの目が覚め袋叩きにされ重傷 再起可能 To Be Continued →...